「明治後期ごろまで育児には食・体・知・才・徳の5育があり、食育は子育ての基本、しつけの土台、分母、根幹でした。
1898(明治31)年版『通俗食物療養法』の著者、石塚左玄は「今日、学童をもつ人は、体育も知育も才育もすべて食育にあると認識すべき」と述べています。
また1903(明治36)年、報知新聞に連載された人気小説『食道楽』を通じて村井弦斎は、「小児には徳育よりも、知育よりも、体育よりも食育が先き。体育、徳育の根源も食育にある」と表現しています。
つい先ごろまで日本の学校では体育はあって食育はありませんでした。食のリスクは最終的に食べる消費者が負います。食物が勝手に口にやってくるわけではありません。自分の判断で賢く選び、自分の手で上手に賢く口に運ぶ子どもたちを育てるのが食育です。
しかし親も子もだれもが多忙な今日、家庭だけの食育には限界があります。そこで学校、地域社会、食育基本法を施行する行政、メディア、民間企業とが連携し、力を合わせて食育活動を広めていかなくてはなりません。
幼児の時から、つくる喜びと味わう喜びを、体験学習し、自分の健康を守る知恵を身につけます。
読み書きができる前から、楽しく遊びながら習得できる場を用意することが、わたしたち大人の大事な役目です。

~内閣府「食育推進評価委員会」専門委員、当協会理事砂田登志子著「楽しく食育」より~